たまには自作の短編小説など。2012年09月04日

元々文章を書くのが好きで、フッと思いついた時に綴ったりしています。
かなり前に綴った自作の小説ですが、良かったら読んでみて下さい。
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「僕と彼女の関係」

 9月のある日の午後。僕はいつものように渋谷駅のハチ公前で彼女を待っていた。彼女は5分遅れて現われて、「待った?」と聞いた。
面白いことに彼女はいつもきっかり5分遅れてやってくる。今日も同じだった。
彼女との関係は友達以上恋人未満というところだ。お互いに縛り合うこともなく
自由に付き合っている。
付き合いは大学生になってから約3年ほどになるが、この関係からの進展は今のところない。
「今日はどうしようか?」
僕が聞くと、「見たい映画があるんだ」と言った。
「じゃぁ、その映画を見よう」
とりあえず現時点でのスケジュールは決まった。
映画の内容はたわいの無いもので、僕としてはちょっと退屈な時間だった。
映画館を出るとそろそろ陽が傾きかけている時間になっていた。
「ねぇ、海を見に行かない?」
突然彼女は言った。いつも唐突に言うのが彼女の癖だ。
「今から? これから行くと夕方になるよ」
そういうと、「いいからいいから。夕方の海を見たくなったの」
「やれやれ」と僕は思ったが、まぁいつものことだから仕方ないかと思い、
「それなら湘南の海にでも行ってみるか」
「やったぁ!」
彼女は素直に喜んだ。
渋谷からだと東横線に乗って横浜へ出て横須賀線に乗れば1時間程で鎌倉まで行ける。早速電車に乗り、鎌倉へ着いたのは午後3時を回っていた。
鎌倉駅からは江ノ電に乗った。小さな電車は左右に車体を揺らしながら僕たちを海の近くまで運んでくれた。
ある小さい駅で電車を降りた。この電車の沿線の駅ならどこからでも海へ行けた。駅からの細い道を歩くと程なく視界が開けて海が見えた。
「やったぁ!海だ!」彼女は子供のように無邪気に喜んだ。
太陽は沈みかけていて、海岸は全体的にオレンジ色に染まっていた。
夏が終わった海は何となく寂しく、波の音だけが聞こえていた。
彼女は突然靴を脱ぐと、海の方へ砂浜を走っていった。
「冷たい!」
波打ち際ではしゃぐ彼女を僕は砂浜に座ってぼんやり見ていた。
彼女との関係を考えてみたが、今の関係以上のことは想像できなかった。
彼女は僕との関係をどう考えているのか知りたかったが、別に聞く気もなかった。今の関係でずっと続けて行くのがいいのかと思ったりした。
9月の日暮れは夏よりも早くなっていた。気がつくと辺りは暗くなりかけていた。僕は彼女に向かって大声で
「おーい、もう暗くなるからそろそろ帰ろう!」
と言った。
「もう少しいいでしょ?」と彼女も大声で返事をした。
このあと特に予定もないし帰るだけだからいいと思った。
太陽が完全に隠れ、辺りは暗くなった。そろそろ引き上げの時間だ。
「帰るぞ!」と言うと、今度は素直に「わかった」と言った。
帰りの電車は空いていた。彼女は疲れたのか僕の肩にもたれて眠ってしまった。
再び僕らの関係を考えてみた。3年間付き合って何も進展していなかったが、
お互いが告白するでもなく、気が付くといつも一緒にいるという感じだった。
僕自身は彼女がいるということで気が安まったし楽しかった。「好きか?」
と聞かれればきっと「好きだ」と答えるに決まっている。
これは恋愛感情なのだろうか? 
眠っていると思っていた彼女が、僕の肩にもたれたままぼそっとつぶやいた。
「私のこと好き?」
唐突なことと僕が考えていたこととがタイミング良く合ってしまったのでちょっと驚いた。
僕は素直に自分の気持ちを口に出していた。
「もちろん好きだよ」
「そう。良かった」と彼女は言うとまた眠りについてしまった。
                               END
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放課後のウォー・クライ2009年07月30日

放課後のウォー・クライ 上原 小夜 著

自分の学校の教師と付き合っている女子高生が主人公で、
「生きる」という事に疑問をもっている。
この先、生きていていいことがあるのだろうか?と。
かつて付き合っていた彼氏から「勝利のおまじない」だと言われ
渡された小さく畳んだ紙を持っている。
競技大会の時、その紙を持って走った時自己ベストが出たことで
、何となく離せなくなってしまった。
ある日、交通事故で親友を亡くしてしまう。それから彼女は
「ウォークライ」を通じて「生きる」と云うことは何かを
見つけるのだった。

一人の女子高生を中心に同級生と関わり合いを持ちながら
のんびりと進んでいく物語。
「ラブ・ストーリー」というジャンルに入っているが、 自分としては
「学園もの」のように感じた。
確かに教師との「ラブ」は存在するのだけど・・・。

おもしろ度 ★★☆☆☆

夜を守る2009年07月20日

夜を守る  石田 衣良

最初、「夜を守る」っていうタイトルだったので、
中年のおじさんたちが自分らの商店街でも守る
という内容かと思っていたが、全く違っていて
若者4人がボランティアで自分たちの街「アメ横」
をきれいにしようとする物語だった。
バイオレンスは無く、街に存在する色々な人たち
と関わり合いながら、物語は進む。
全体的にほのぼのとした感じがしておもしろい。
石田衣良氏の物語は非常に読みやすく、自分には
合っていると思う。
最近は氏にはまっていて、色々と読み漁っている。

おもしろ度 ★★★★☆